奥様

「お宅の奥様、もしかして妊娠中?」って隣のおばちゃんに聞かれた。
「え? いや、違いますけど」って答えたけど、なんでこんなこと聞かれるのか奇妙な気がしてた。
「いえね、お宅の奥様、最近ちょっとおかしいのよね」って。
「ふさぎこんだと思ったら、急に元気になったりして。ほら、妊娠中ってホルモンの関係で浮き沈みが激しいっていうから」
言われてみて、思い当たることはあった。
確かにそうだ。夕に帰ってくると、時々電気もつけずにぼーっとしてるかと思えば、「おかえり!」ってむやみに元気な時もある。
「ちょっと様子を見てみます」と言って、その隣のおばちゃんとは別れた。
「奥様、お大事にね」と言われたが、まさか病気なのか?と心配になってきてしまった。
妊娠ということはないと思う。ここしばらくずっと残業が続き、ご無沙汰だったし。
というのも、実は妻には言えてないのだが、仕事で失敗してしまい、上司にめちゃめちゃに怒られ、くさくさしていたのだ。
大事な書類をなくしてしまったんだから、これは自分のせいなのだが。
恥ずかしいのと情けないのとで妻には言えずに悩んでいたのだ。
けれど、万が一妊娠だとしたら、結婚してもう三年、そろそろ出来てもよいころだ。自分も父親になるのかと思うと、目じりが下がる
まぁ、妻にはそれとなく聞いてみようとおもって帰宅した。
妻は、また明かりもつけずにいた。
「何かあったか?」と聞いたら、妻は首を振る。
「あなたこそ、何かあったでしょ」と妻は涙ぐみながら言った。
「いや、別に」
「浮気、してるんでしょ? 最近、帰り遅いし、そわそわしてるし」
あ、それが心配でふさぎこんだり、無理に元気な振りをしていたのか、と合点がいった。
探偵
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